HOME > 看護生涯学習支援 > 看護の国際的な情報 > 英国(UK)における看護教育について
宮本千津子、田中克子、服部律子、黒江ゆり子
英国(U.K.:United Kingdom of Great Britain and northern Ireland)は、グレートブリテン島、アイルランド島、およびその周囲にある多数の小さな島々から成り立つ国であり、グレートブリテンはイングランド、スコットランド、ウエールズの3国に分かれている。今回私たちは、イングランドおよびスコットランドの看護学教育について、キングスカレッジ、ロンドン大学、ロイヤルロンドン病院、聖バースロミュー病院、エジンバラ大学、NBS(National Board for Nursing, Midwifery and Health Visiting for Scotland)等を視察する機会を得られたので報告する。

エジンバラ大学
英国の義務教育は5歳で始まり16歳で修了するが、年齢による学校の区分は地方自治体によって異なる。高等教育はイングランドとウエールズではGCE(General Certificate of Education)、スコットランドではCSYS(Certificate of Sixth Year Study) という国家試験を受けて一定のレベルを取得後に大学(Higher Education)あるいは大学以外の教育機関(Further Education)に進学することができる。英国の高等教育機関は、国が設立した高等教育基金機関の資金提供を受けることができ、1992年の継続・高等教育法によってポリテクニック(Polytechnic)と呼ばれていた職業的コースをもつ高等教育機関が大学に再編成された歴史を持ち、看護学教育に携わる高等教育機関もこの時期に一斉に大学に移行している。
また、看護師資格登録の管理は看護師資格取得のための国家や州レベルによる共通資格試験は実施されておらず、看護学教育制度や看護師資格登録制度は英国看護助産訪問保健中央協議会(UKCC:United Kingdom Central Council)とイングランド、ウエールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの全国協議会(National Board)によって管理されている。
UKCCが提示する登録前看護基礎教育は、18ヶ月の共通基礎プログラム(Common Foundation Programme)とその後の分野別専門プログラム(Branch Programme)で構成され、共通基礎プログラムでは看護の基本的な知識と技術を学び、分野別専門プログラム(成人、小児、学習障害、精神など)では特定分野の個人および集団のニーズを満たす能力を学習する。UKCCは教育の質の向上と維持を図るために登録前教育基準を定め、実践における技術と知識の所定のレベルと範囲、および最終成果を学習目標として提示している。
UKCCによる共通基礎プログラムの到達目標は、看護における倫理的課題、看護ケアの提供、看護ケアマネジメント、および個人的専門職的ディベロプメントの四領域に分類され、それぞれ到達目標(Outcome Statement)、結果の指標(Outcome Criteria)、および達成を示す根拠(Evidence of achievement)が示されている。倫理的課題では「看護実践のための専門職規定の意味するところの知識をもって討議する」など5つの到達目標、ケア提供では「効果的なコミュニケーションおよび人間関係の方法・障壁・限界について討議する」など10目標、ケアマネジメントでは「患者/クライエントおよびケア提供者の顕在的・潜在的リスクを明確にし、健康と安全を促進することにそれらの人々が参加できるように寄与する」など3目標、およびディベロプメントでは「自分自身の学習についての責任を示す」など2目標が示されている。(表1)
表1
| 領域1 | 看護における倫理的課題 |
|---|---|
| 達成目標 Outcome Statement |
1.1看護実践のための専門職規定の意味するところを知識をもって討議する。 |
| 達成の指標 Outcome Criteria |
a)看護を規定する政策、ガイドライン、プロトコル、手順の役割について注目する。 b)いかに看護がヘルスケア提供における保健医療福祉政策とその変化に対応して発展してきたかを理解する。 |
| 達成を示す根拠 Evidence of achievement |
学生は以下のことができる。
|
次に紹介するのは、City University Londonのパイロットカリキュラムである。このカリキュラムの特徴は実習を早期に行い、技術トレーニングに重点をおいたものである。カリキュラムは、9つのモジュールで構成されており、1年間は3つのモジュールで構成されている。
学生が選択できるコースには、学位取得(degree)コースと登録看護婦資格取得(deploma)コースがある。この両者は、モジュール1から3の基礎教育(foundation programme)は同じで、その後のモジュールのプログラムは同じであるが教育内容が異なり、学位取得コースには3年目に卒論が課せられており、授業内容も、分析力や批判力に重点をおいた教育が行われている。
以下各モジュールのプログラムについて簡単に説明を行い、一例を表に示す。なお、1モジュールは15週間、1日7時間、1週間は35時間で構成されている。
1)基礎教育としてのモジュール1~3
基礎教育は1から3モジュールで行われる。モジュール1は、実習以外の講義の時間を示す理論(Theory)(9週間)と分野別専門領域実習(Branch specific practice)(6週間:成人、小児、精神領域)で構成されている。
2)領域専門教育としてのモジュール4~6
モジュール4からは、領域別の専門教育になる。火災時の対処、避難方法、抑制および物品の取り扱い等についてもこのモジュールで学習する。
3)学修を深めるモジュール7~9
このモジュールでは、4日の夜勤実習が課せられており、理論が2週間、実習が13週間、演習が4週間で構成されている。学位取得(degree)コースでは卒論のための演習となる。
表2
| 基礎教育としてのモジュール1~3のうちモジュール2(1例) | |||||||||||||||
| 週 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
| プログラム | 理論 1週間(35時間) |
成人1 学習障害 2週間(70時間) |
精神 2週間(70時間) |
小児 2週間 (70時間) |
母性 2週間(70時間) |
分野別専門領域 4週間(140時間) |
講談 1週間(35時間) |
理論 1週間(35時間) |
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| 領域専門教育としてのモジュール4~6のうちモジュール6(1例) | |||||||||||||||
| 週 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
| プログラム | 理論 1週間(35時間) |
コミュニティ 4週間(140時間) |
演習 1週間(35時間) |
理論 2週間(70時間) |
選択領域 4週間(140時間) |
演習 2週間(70時間) |
理論 1週間(35時間) |
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| 注)学位取得コースと登録看護婦資格取得コースでは教育内容が異なる。 | |||||||||||||||
| 学修を深めるモジュール7~9のうちモジュール8 | |||||||||||||||
| 週 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
| プログラム | 理論 1週間(35時間) |
実習 9週間 (315時間、内35時間の演習を含む) |
理論 1週間(35時間) |
演習(学位取得コースは卒論のための演習) 4週間(140時間) |
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| 注)学位取得コースと登録看護婦資格取得コースでは教育内容が異なる。 | |||||||||||||||
1)基礎教育における看護技術教育
シティロンドン大学では最初の1年は基礎教育であり基礎教育の修了までに、身に付けておくべきSkills(看護技術)を学生に提示してある。学生は期待されるレベルにまで看護技術を習得していなければならない。
1年生の始め(モジュール1)から臨床での教育が行われるので、看護技術は基本的には臨床の場面で評価されるのであるが、実際にできる機会のなかった技術に関しては、臨床指導者や教員などの指導を受けて、何らかの実践の機会をつくり評価を受けなければならない。そのためにClinical Skills Centerといわれる演習施設が用意されている。

Clinical Skills Center
2)技術教育プログラム-Schedule of Skills Development-
学生はどのような技術をどの程度いつまでに身につければいいか、また指導者は学生がどこまで技術について学習がすすんでいるのかが、お互いに確認できるようにするために、Schedule of Skills Development という小冊子が使われている。この小冊子は、必要な看護技術がコミュニケーション技術は9項目、臨床の看護技術は10項目に分けられ、さらに実際の技術内容として細分化されている。それぞれの技術の評価は自己評価と指導者の評価がある。技術によって達成目標とされるレベルが異なっている。
達成目標は5段階のレベルで提示されている。
| 0 | 臨床の場面でまだ経験したことがない |
|---|---|
| 1 (Novice) |
直接の監視下にあって実施できる、または常に指導が必要であるレベル |
| 2 (Advanced Beginner) |
直接の監視下にあるが、少しの援助で十分なレベルまで達成できる |
| 3 (Safe Practice) |
直接指導者がつかなくても少しの援助で達成できる |
| 4 (Competent) |
指導者の援助がなくとも内容や時間的にも満足のいく技術レベル |
それぞれのレベルは、4つの側面から評価される。それらは技能的な能力、知識を応用する能力、態度や感性に関わる能力、臨床の場面で実践できる能力である。
また、技術評価としては1990年からOSCE(Objective Structured Clinical Examination)を複数の大学が協同で採用しており、さらに実習指導者(Mentor:メントールあるいはメンター)に求められる教育能力については基準が提示されている。
英国における卒後教育(graduate education)は、学士取得者ばかりでなくすべての登録看護師を対象としており、生涯教育の発想で実施されている。卒後教育はUKCC(United Kingdom Central Council:英国看護助産訪問保健中央協議会)と各地域の協議会が管轄し企画、運営および質の保証を行っており、教育や看護現場における調査に基づきスタンダードカリキュラムや分野別コア技術マニュアル、より専門的な技術マニュアルを作成している。
卒後教育の運営・実施は大学が請け負っており、UKCCまたは協議会に申請を出し、認可されれば開講してよいことになっている。卒後教育の課程や科目の名称は大学によって独自であるが、修士課程、博士課程のほかに、学位に依らず専門知識を学習することができる高度専門課程(Diploma of Higher Education:DipHE)などがある。高度専門課程では専門看護師の資格を取得できるものもある。それぞれの課程はフルタイムでもパートタイムでも履修が可能なようになっており、自分のライフスタイルに合わせて、たとえば看護師として働きながら受講することも可能であり、実際そのような例が多いとのことであった。
開講されている科目数は非常に多く、期間・形態も様々である。我々が訪問したキングスカレッジでは、約200のコースが準備されていた。期間も1週間集中のものから半年かかるものまであり、取得できる単位や実習が必要かどうかといった科目の特徴によって多様であった。このようなシステムにより学士を取得していない者であっても必要な科目を履修し単位を取得していけば、学士や修士を取得することができるし、修士課程や博士課程の学生にとっては、非常に多様な科目の中から選択することが可能となっている。
表3 : ロンドン・キングズカレッジの卒後教育(例)


ロイヤルロンドン病院 -卒後教育の実習場になっている-

エジンバラ大学看護学部の大学院生と
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