HOME > 看護生涯学習支援 > 看護の国際的な情報 > アメリカにおける地域看護センターの活動
グレッグ美鈴、田中千代
ニューヨーク州北部にあるこの私立大学の看護学部は、地域看護センターで下記の7領域の活動を行っている。地域でのケア、ケアマネージメント、海外へ出かける人のためのケア、栄養/体重管理、学校でのケア、組織と共同した健康管理、継続教育である。これらの活動は、アメリカの他の地域看護センターに見られるような看護職のみの運営ではなく、医師、薬剤師、栄養士などがかかわる1つの大きなビジネスとして存在している。
これらの様々な活動を支える考え方には、病院では急性期の患者のみにケアを提供するため、看護職がバーンアウトしやすく、それを防ぐために看護職の役割拡大が必要だということがある。その1つの例が、継続教育の一環として実施されている直接介助のできる手術室看護職(RNFA)を養成する研修である。しかしRNFAを雇うことが医師より安価であるという経済的理由以外に、どれだけ看護の視点が重視されているかは疑問であり、研修担当者のナースプラクティショナー(以下NPと略)からも明確な返答は得られなかった。
学校でのケアは、公立高校で行われていた。予防接種、健康教育・相談、カウンセリング、亜急性症状の治療などのサービスが、NP、小児科医、精神科医らによって提供されている。州の助成金によって経営されているため、これらのサービスは全て無料である。ここに勤務するNPは、生徒の両親との間の秘密保持の問題が最も難しく、緊急に命に関わらない限り、いかなる情報も親には提供しないと語っていた。
地域でのケアとして、モンロー郡保健部門では、虐待や薬物乱用など様々な理由で親が親権を剥奪された子どもに、看護師、医師、NPがケアを行っている。1ヶ月200~300人の子どもが訪れ、対象となる子どもの多さに驚かされる。またセントジョセフ近隣センターでは、6人のNPと3人の医師によってプライマリーケアが行われている。ケアを受ける人は、1回5ドル(約570円)を支払うだけである。安価な理由は、NPと医師の殆どがボランティアであり、医薬品は製薬会社からの寄付でまかなわれているためである。

様々な玩具が置かれたモンロー郡保健部門内の診察室
施設と共同した健康管理では、印刷工場で月2回、1回2時間、看護師が訪問して従業員に健康相談を行っている。会社から1時間75ドル(約8,600円)が支払われ、これは会社が独自で看護師を雇うより安価だということだった。会社で提供できるサービスは、雇用者のニーズアセスメント、健康教育、マッサージ療法、悲嘆のためのカウンセリング、退職後の人生設計など多彩である。
以上の活動は、看護学部の地域看護センターと契約をしなくても可能であるが、大学側には実習場として使えるメリットもある。これらの地域看護センターで働く看護職は、センターから派遣された場所で実践を行うだけでなく、短時間であるが、看護学部で教育を行っている人もいる。

様々な玩具が置かれたモンロー郡保健部門内の診察室
ミシガン湖近くにあるこの州立大学の看護学部は、4つの地域看護センターを経営している。これらのセンターの特徴は、完全に看護職が運営していること、地域に現存する施設の中に位置していること、公的・私的な研究助成金を受けていることである。これは、ロチェスター大学の地域看護センターと大きく異なる点である。
各地域看護センターの活動は、その地域のニーズを反映している。例えば、90%以上が黒人で、80%以上が母親のみの家庭で、さらに50%以上が17歳以下、10%以上が3歳以下という政府補助住宅の中に位置するシルバースプリングス地域看護センターでは、雇用のための健康診断、子どもの健康診断、予防接種が主な活動である。週に1日、非常勤の医師が診療をするが、それ以外は看護師、保健師、NPによりサービスが提供されている。
平和の家地域センター内の看護センターは、健康保険を持たない低所得者が多く、開業医もほとんどいない地域にある。地域の特性から、女性と子どもに焦点を当てた活動を行い、また移民も多い地域であるため、ラオス語と英語の話せる看護師が勤務している。週5日提供されるサービスは、全て無料である。ここでは、衣服を受け取りに来た人が、子どもの咳がひどいという話しをすると、すぐに看護センターに連絡が入り、子どもの診察をするというように、社会サービスと看護ケアがうまく結びついていた。

平和の家地域センター
小学校の中にも地域看護センターが存在していた。小学校の生徒、その家族、および健康保険を持たない地域住民がこのセンターでケアを受ける。生徒の中には、3世代に渡って無職という家庭もあり、子どもの教育にも健康にも無関心な親が多いと、NPは嘆いていた。
ホームレスのためのシャローム看護センターは、現在研究助成金を受けていないため、学生の実習時のみサービスを提供している。写真にあるセンターの内装を行ったのも実習生である。見学時、看護学部の4年生4人が実習中で、血圧や血糖測定の他、自尊感情に焦点を当てたグループディスカッションを行っていた。反省会に参加したが、学生はこのセンターでの実習から学んだこととして、「健康はその人の仕事、住まいと関連していて、健康を環境から切り離して考えることは出来ない。提供するのは技術ではなく、自分自身である。ホームレスの人たちと自分は、何ら変わりのない人間である。」という感想を述べていた。

シャローム看護センター:実習生、教員と共に
参考文献
梅津美香他:米国看護学部における地域貢献のありようについて、岐阜県立看護大学紀要、1(1)、154-160。
田中千代他:米国看護学部の地域看護センターを視察して、岐阜県立看護大学紀要、2(1)、149-155。
![]()